【第7回】SNSの効果は「今日の売上」では測れない— 蓄積型購買行動と見るべき3つの指標

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更新日
執筆者沖山 佑樹
コラムテーマWebマーケティング
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導入:結論——SNSは「刈り取りの場」ではなく「蓄積の場」である

先に結論をお伝えします。

現代の購買行動は、SNSでの接触が積み重なって信頼と想起が形成され、あるとき指名検索や問い合わせとして表面化する「蓄積型」に変化した。したがってSNSの効果を投稿直後の直接コンバージョンだけで測ると、実際には効いている施策を「効果なし」と誤判定してしまう。見るべき指標は、(1)リーチ数(接触の量)、(2)指名検索数(蓄積の結果)、(3)間接コンバージョン(経路への貢献)の3つである。

「SNSを半年やったが売上につながらないので、やめようと思う」——この判断、実は「効果がない」のではなく「効果を測る場所を間違えている」ケースが大半です。本コラムでは、購買行動の構造変化を公的データで確認し、SNSの効果を正しく捉える3つの指標を解説します。

公的データが示す購買行動の変化——「探してから買う」が標準になった

オンライン購買は26.1兆円市場へ拡大し続けている

経済産業省の「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」によれば、2024年の国内BtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は26.1兆円(前年比5.1%増)、物販系のEC化率は9.78%と一貫して拡大しています。また企業間取引でもBtoB-EC市場規模は514.4兆円、EC化率は43.1%に達しました。購買の起点も完結もオンラインに移るなか、その途中にあるSNSでの接触が購買に影響しないと考えるほうが不自然です。

SNSは「買う前に調べる場所」として定着している

総務省「通信利用動向調査」(令和4年)によれば、SNSの利用目的として「知りたいことについて情報を探すため」を挙げた利用者は64.5%にのぼります。つまりSNS上の接触の多くは「今すぐ買う」ためではなく「知る・比べる・覚えておく」ための行動です。この段階の接触は直後の売上には表れませんが、後日の指名検索・問い合わせという形で回収される——これが蓄積型購買行動の構造です。

蓄積型時代の効果測定——見るべき3つの指標

指標

何を測っているか

確認方法

(1) リーチ数

見込み顧客との接触の「量」。蓄積の入口

各SNSの分析機能でリーチ・再生数を月次集計

(2) 指名検索数

社名・商品名で検索される回数。蓄積が態度形成に至った証拠

検索エンジンの無料ツール(Search Console等)で自社名の検索表示回数を確認

(3) 間接コンバージョン

問い合わせ・購買に至る経路の中でSNSが果たした貢献

アクセス解析での経路確認+問い合わせ時の「きっかけ」ヒアリング(第8回で詳述)

 

3指標は「ファネルの温度計」として読む

3つの指標は、リーチ(知られる)→指名検索(思い出される)→間接コンバージョン(選ばれる)という順に、蓄積の進み具合を示します。リーチが伸びているのに指名検索が増えないなら「接触の質」に、指名検索が増えているのに問い合わせが増えないなら「受け皿(サイト・プロフィール)」に課題がある——というように、どこで蓄積が止まっているかを診断できます。直接売上だけを見ていては、この診断は不可能です。

「今日の売上」で測ってよい施策との使い分け

誤解のないように補足すると、キャンペーン告知や広告配信など「刈り取り型」の施策は直接コンバージョンで測って構いません。問題は、蓄積型の施策(日々の投稿・教育コンテンツ)に刈り取り型の物差しを当てることです。施策の性質と物差しを一致させることが、SNS投資の意思決定の大前提になります。

今月からできる3つのアクション

19.  指名検索数の計測を今日から始める: 検索エンジンの無料ツールで自社名・商品名の検索表示回数を確認し、SNS施策開始前の基準値を記録してください。計測開始が遅れるほど、効果の証明が難しくなります。

20.  3指標の月次定点観測シートを作る: リーチ・指名検索・間接コンバージョンを1枚のシートで毎月記録し、3〜6ヶ月のトレンドで判断する運用にしてください。

21.  経営レビューの報告フォーマットを変える: 経営会議へのSNS報告を「フォロワー数」から「3指標+考察」に変更してください。投資判断の質が変わります。

よくある質問(FAQ)

Q. 効果が出るまでどのくらいの期間を見るべきですか?

A. 蓄積型施策は、指名検索数の変化が見え始めるまで3〜6ヶ月、問い合わせの質・量の変化まで6〜12ヶ月を目安に経営計画へ織り込むことを推奨します。1〜2ヶ月での撤退判断は、蓄積型の性質上早すぎます。

Q. 直接売上がゼロでも続けるべきですか?

A. 3指標が伸びているなら継続、3指標すべてが6ヶ月横ばいなら企画・構成の見直し(第2回・第3回)が先です。「売上ゼロだから中止」でも「とにかく継続」でもなく、蓄積の進み具合で判断してください。

Q. フォロワー数は見なくてよいのですか?

A. 参考値としては有効ですが、意思決定の主指標には不向きです。フォロワーが少なくてもリーチと指名検索が伸びていれば施策は機能しています。逆にフォロワーが多くてもリーチが減っていれば危険信号です。

結びの言葉

SNSの効果測定とは、「今日の売上」ではなく「未来の売上の仕込み」を可視化する営みです。次回は、3つ目の指標「間接コンバージョン」を深掘りし、どのSNSがどれだけ効いたかを見える化するアトリビューションパス分析を解説します。

 

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執筆者 : 沖山 佑樹

2013 年に船井総研に中途入社。 「スモールでも」「ローカルでも」をモットーにテクノロジーを使って、デジタルマーケティングに関する支援をしている。 中堅・中小企業とプラットフォーマーとの架け橋として、ご支援先の商品やサービスを理解し、最適なプラットフォーム活用(ネット広告やデジタルツールなど)を推進している。