【第9回】「1人担当者」は崩壊の始まり— SNS運用を属人化させない4つの役割分担

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執筆者沖山 佑樹
コラムテーマWebマーケティング
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導入:結論——SNSが止まる原因は「ネタ切れ」ではなく「体制」である

先に結論をお伝えします。

SNS運用の最大の失敗要因は、コンテンツの質ではなく「1人運用による属人化」である。担当者の異動・退職・モチベーション低下と同時に更新が止まり、それまで蓄積したアカウント資産が崩壊する。処方箋は、SNS運用を(1)戦略、(2)企画、(3)制作、(4)数値分析、の4つの役割に分解し、「人」ではなく「役割と手順」で回る体制を作ることだ。少人数の会社でも、役割の分解と文書化はできる。

「SNSに詳しい若手に任せていたが、退職して更新が止まった」「担当者が多忙になり、投稿が3ヶ月途絶えている」——SNS運用の相談で最も多いのは、実はテクニックではなく体制の崩壊です。第7回で述べたとおりSNSは蓄積型の資産ですが、更新停止はその資産価値を静かに毀損します。本コラムでは、属人化がなぜ起きるのかをデータで確認し、4つの役割分担による解決策を解説します。

「詳しい人を採ればよい」が通用しない——公的データが示す人材の現実

中小企業庁の「2024年版 中小企業白書」によれば、中小企業の採用は中途採用が中心である一方、その課題として「求める人材が応募してこない」ことが挙げられ、人材の不足感は応募の少なさが要因の一つと分析されています。デジタル人材はさらに深刻で、IPA(情報処理推進機構)の「DX白書2023」ではDXを推進する人材の量が「大幅に不足している」と回答した日本企業は49.6%、続く「DX動向2024」では62.1%まで上昇しました。

つまり「SNSが得意な人材を採用して任せる」という戦略は、そもそも労働市場に人がいないうえ、仮に採れてもその1人への依存という時限爆弾を抱え込むことになります。属人化の解決は採用ではなく、仕組みで図るべきなのです。

SNS運用を分解する「4つの役割」

役割

主な仕事

誰が担うべきか(目安)

(1) 戦略

目的・ターゲット・KPI(第7回の3指標)の設定、経営との接続、予算・媒体の配分判断

経営者・マーケティング責任者

(2) 企画

検索キーワード(第3回)と顧客の疑問からのネタ出し、構成台本(第2回)の作成

顧客接点のある社員+現場の専門知識を持つ社員

(3) 制作

撮影・編集・投稿・コメント返信などの実務

若手社員・パート・外部パートナーでも可

(4) 数値分析

視聴維持率・リーチ・指名検索・経路(第8回)の集計と改善提案

数字に強い社員(経理・企画部門との兼務も可)

 

少人数でも「帽子を分ける」ことはできる

4つの役割は4人を意味しません。2人の会社なら「戦略・分析」と「企画・制作」で分けることも、1人が曜日で帽子をかぶり替えることもできます。重要なのは、「今どの役割の仕事をしているか」を本人と周囲が認識できる状態にすることです。役割が未分化なまま「SNS全部」を任せることが、業務の無限膨張と燃え尽きを生みます。

属人化を防ぐ3点セット——手順書・企画会議・数値レビュー

役割分担を機能させる装置は3つです。(1)手順書: 投稿手順・デザインテンプレート・ハッシュタグセット(第4回)・構成テンプレート(第2回)を文書化し、誰でも一定品質で代替できる状態にする。(2)週次企画会議: ネタ出しを担当者個人の発想からチームの定例プロセスに変える。(3)月次数値レビュー: 第7回の3指標を役割横断で確認し、改善を個人の反省ではなく組織の意思決定にする。この3点が揃えば、担当者が交代してもアカウントは止まりません。

今月からできる3つのアクション

26.  現状の役割マップを作る: 4役割それぞれについて「現在誰がやっているか」を書き出してください。すべてが同じ1人の名前なら、それが最大の経営リスクです。

27.  手順書の第1版を作る: まず「投稿の手順」と「構成・デザインのテンプレート」だけでも文書化してください。完璧を目指さず、現担当者が1日で書ける粒度で始めることが重要です。

28.  週30分の企画会議を設定する: 担当者+顧客接点のある社員1名+経営層1名の3人で、ネタ出しと数値確認を行う定例を設けてください。属人化防止と経営接続が同時に実現します。

よくある質問(FAQ)

Q. 本当に1人しか担当者を置けません。どうすべきですか?

A. 1人運用でも「役割の分解と文書化」は必須です。加えて、企画のネタ出しだけは他部門を巻き込む(週次で質問を集める等)、制作の一部はAIや外部を使う(第10回参照)など、「実務は1人でも、仕組みは複数人」の状態を作ってください。

Q. 外注と役割分担はどう組み合わせるべきですか?

A. 外注してよいのは主に(3)制作です。(1)戦略と(4)数値分析の判断を外に出すと、ノウハウが社内に残らないブラックボックス化が起きます。制作を外注する場合も、企画意図と数値は自社で握ってください。

Q. 経営者はどこまで関与すべきですか?

A. (1)戦略の決定と、月次数値レビューへの参加の2点です。日々の投稿内容への場当たり的な口出しは、担当者を疲弊させ属人化への逆戻りを招きます。関与は「定例の場」に限定するのが原則です。

結びの言葉

SNSアカウントは、担当者個人の持ち物ではなく会社の資産です。資産である以上、特定個人と運命を共にさせてはいけません。最終回の次回は、この4役割体制を少人数で現実に回すための切り札——「AIのアシスタント活用」と内製化の5ステップを解説します。

 

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執筆者 : 沖山 佑樹

2013 年に船井総研に中途入社。 「スモールでも」「ローカルでも」をモットーにテクノロジーを使って、デジタルマーケティングに関する支援をしている。 中堅・中小企業とプラットフォーマーとの架け橋として、ご支援先の商品やサービスを理解し、最適なプラットフォーム活用(ネット広告やデジタルツールなど)を推進している。