【第5回】生成AI(Claude等)×SaaS型基盤— 制作スピードと安全性を両立する、次世代のWebサイト制作・運用

公開日
更新日
執筆者梶田 健人
コラムテーマWebマーケティング
SHARE

導入:結論——「作り方」はAIで速く、「持ち方」はSaaSで安全に

先に結論をお伝えします。

次世代のWebサイト戦略は2つの転換で成り立つ。(1)作り方の転換: Claude等の生成AIを制作・運用の実務(コード生成、コンテンツ下書き、構造化データ作成)に組み込み、スピードとコストを最適化する。(2)持ち方の転換: 自社でプラグインやサーバーの脆弱性を管理し続ける従来型CMSから、プラットフォーム側が厳格に保守・管理する「SaaS型基盤」へ移行し、脆弱性リスクを構造ごと手放す。攻めはAI、守りはSaaS——この組み合わせが、専任者を置けない中小企業の現実解である。

第3回・第4回で見たとおり、従来型の「自前管理のサイト」は、技術・体制・コストの三重苦を抱えがちです。幸い、いまはその構造自体を変えられるタイミングにあります。本コラムでは、生成AIとSaaS型基盤という2つの選択肢を、公的データと実務の視点から解説します。

企業のAI活用は「使う会社」と「様子見の会社」で二極化——総務省データ

総務省「令和7年版 情報通信白書」によれば、業務で生成AIを利用している国内企業は55.2%と過半に達した一方、米国90.6%・中国95.8%・ドイツ90.3%と、諸外国は9割超です。日本企業の利用内容のトップは「メールや議事録、資料作成等の補助」で32.1%(米国は同用途で75.0%)。導入の懸念としては「効果的な活用方法がわからない」が最多でした。

つまり、日本の中小企業のAI活用を止めているのは技術ではなく「適用場面の解像度」です。Webサイトの制作・運用は、生成AIの適用場面として最も費用対効果が見えやすい領域の一つ——これが本コラムの提案です。なお、業務利用のルール整備には総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」(2024年4月・第1.0版、以後改定あり)が公的な指針になります。

転換1:生成AI(Claude等)で「制作の実務」を変える

Claude等の生成AIは、Webサイトの制作・運用の以下の工程で即戦力になります。

工程

生成AIに任せられること

人間が判断すること

設計・構成

サイトマップ案・ページ構成案の叩き台を複数生成

自社の戦略・顧客理解に基づく取捨選択

コーディング

HTML/CSSやテンプレートのコード生成・修正案の作成

動作検証と公開の承認

コンテンツ

会社案内・FAQ・事例記事の下書き、既存文章のリライト

事実確認・自社らしさの注入・法令表現の確認

AI検索対策

構造化データ(JSON-LD)の生成、質問ベースコンテンツへの変換(第2回参照)

マークアップ内容の正確性の確認

保守・運用

修正箇所の特定支援、更新作業の手順書化

変更の最終確認とバックアップの担保

 

ポイントは、従来「制作会社への依頼→見積→数週間待ち」だった工程の多くが、AIの叩き台+人間の判断という内製フローに置き換わることです。これは第4回で見た「1行の修正に数週間と費用がかかる」属人化構造の、根本的な解毒剤になります。

転換2:「SaaS型基盤」で脆弱性リスクを構造ごと手放す

SaaS型基盤とは、サーバー・システム本体・セキュリティ更新をサービス提供事業者側が一元管理するWebサイト/EC基盤です。自社でインストール・管理する従来型CMSとの違いは次のとおりです。

観点

従来型CMS(自社管理のWordPress等)

SaaS型基盤

セキュリティ更新

本体・プラグインの更新を自社(または保守会社)が実施し続ける必要

プラットフォーム側が常時実施。利用者側の更新作業が原則不要

脆弱性の入口

多数の開発元によるプラグインが弱点になりやすい(第3回参照)

機能はプラットフォームが統合管理し、品質を統制

障害・バックアップ

自社の契約と設定次第。責任分界が曖昧になりがち

サービス水準として提供され、責任範囲が契約上明確

コスト構造

初期費用は低いが、保守・修正の変動費が積み上がる

月額固定が中心で、総所有コストが予測しやすい

自由度

カスタマイズの自由度は高い

プラットフォームの提供範囲内(近年は大幅に拡大)

 

たとえばEC領域のSaaS型基盤の代表例であるShopifyは、クレジットカード業界の国際セキュリティ基準(PCI DSS)への準拠やシステムの保守・更新をプラットフォーム側で担うことを公式に示しています。「セキュリティの専門家チームを月額費用で共有する」——これがSaaS型の本質であり、専任者を置けない中小企業にとって、第3回のチェックリストを「そもそも自社でやらなくてよい状態」にする選択肢です。

移行を成功させる3ステップ

1.  要件の棚卸し: 第4回の台帳を基に、現サイトの機能・コンテンツのうち「本当に必要なもの」を仕分けしてください。移行は不要機能を捨てる絶好の機会です。

2.  基盤の選定: 自社の用途(コーポレート/採用/EC)に合うSaaS型基盤を選び、AI検索対応(構造化データ・第2回の要件)が実現できるかを確認してください。

3.  AI活用ルールとセットで運用設計: 生成AIを使う工程と人間が確認する工程を定め(AI事業者ガイドライン参照)、移行後の更新フローを文書化してください。基盤を変えても運用が属人化しては意味がありません。

よくある質問(FAQ)

Q. 生成AIで作ったサイトやコードは、品質面で問題ありませんか?

A. AIの出力をそのまま公開するのではなく、動作検証と事実確認を人間が行う前提であれば、実務品質に到達しています。むしろ「AIが下書きし、人間が確認する」フローは、確認工程が明文化される分、従来の属人的な制作より品質が安定する側面もあります。

Q. WordPressからSaaS型に移行すると、SEOやAI検索対策は不利になりませんか?

A. 適切に移行すれば不利にはなりません。URL転送(リダイレクト)設計と、第2回で解説した構造化データ・コンテンツの移植を計画に含めることが条件です。むしろ表示速度や安全性の改善が評価にプラスに働くことも多くあります。

Q. 移行費用が捻出できるか不安です。

A. 第4回で作った「現状維持の年間総コスト(保守費+修正費+リスク)」と比較してください。数年単位の総所有コストで見るとSaaS型が下回るケースは珍しくありません。段階移行(まず採用サイトだけ等)でリスクと投資を分割する方法もあります。

結びの言葉

「作り方はAIで速く、持ち方はSaaSで安全に」——この転換は、Web担当者の負担軽減であると同時に、第1回から述べてきた「AIに選ばれる情報基盤」を持続可能にする経営判断です。最終回の次回は、AI検索時代の攻めの一手——「会話型AI広告」の可能性と、いま始めるべき準備を解説します。

 

執筆者 : 梶田 健人

大手総合商社、広告代理店を経て、株式会社船井総合研究所に入社。 主にLINE / Yahooプロダクトをフルファネルで活用したデジタルマーケティング戦略で大手・中堅企業のニーズに合わせた運用方法の提案から実行まで支援をしている。